ブレインサイエンス・レビュー 2019
はじめに
公益財団法人ブレインサイエンス振興財団理事長
学士院会員、東京大学医学系研究科特任教授 廣川 信隆 3


序章 社会の中の脳科学
公益財団法人ブレインサイエンス振興財団常務理事
新潟大学名誉教授 板東 武彦 15


社会的認知機能のシステム的理解
自然科学研究機構生理学研究所 認知行動発達機構研究部門 磯田 昌岐 27
はじめに
1. 自己行為と他者行為の区別
2. 内側前頭皮質における自己行為と他者行為の区別
3. 内側前頭皮質における他者行為のエラー処理
4. 他者エラー細胞の機能的役割
5. 内側前頭皮質を中心とした自他行為情報処理の神経ネットワーク
6. サル自閉スペクトラム症モデルにおける内側前頭皮質細胞の活動
おわりに


発火タイミングに基づく匂い識別
九州大学大学院医学研究院 今井 猛 45
はじめに
1. 嗅神経細胞の機械刺激受容によって生み出される嗅球のオシレーション
2. オシレーションの位相に基づく匂い刺激と機械刺激の識別
3. Phase codingの安定性と濃度非依存的匂い情報表現
4. Phase codingにおける機械刺激応答の役割
5. Phase codingを支える神経回路基盤
6. 嗅球のphase codeは嗅皮質でどのようにして読み取られるのか?
7. 感覚情報処理におけるphase codingの意義


レビー小体型認知症の早期診断法の確立
京都大学大学院医学研究科 江川 斉宏 65
はじめに(認知症について)
1. レビー小体型認知症について
2. 睡眠脳波とREM睡眠行動異常(RBD)について

3. DLB病理モデルマウスを用いた長期間睡眠ステージ解析
3-1 マウスの睡眠ステージリアルタイム判定システムの確立
3-2 αシヌクレイン蓄積するDLB病理モデルマウスにおける睡眠ステージの解析
4. 認知症患者における脳波検査の背景について
5. 簡易型脳波センサ(以下Pセンサ)の性能評価とそのDLB診断上の有用性
5-1 Pセンサについて
5-2 Pセンサを用いた健常者脳波測定の性能評価について
5-3 Pセンサを用いた患者対象脳波測定について
5-4 動作時の特定高周波数帯域は認知機能低下群・コントロール群間で有意差を認める
5-5 安静時のα周波数帯域(8〜12Hz)はアルツハイマー病・レビー小体型認知症群間で有意差を認める
5-6 今後の展開について
6. 最後に


小脳興奮性可塑性に基づく神経細胞機能変化
京都大学 白眉センター 大槻 元 83
はじめに
1. 小脳可塑性
1-1 平行線維シナプス可塑性
1-2 登上線維シナプス可塑性
2. 発火頻度増大可塑性
3. 樹状突起興奮性可塑性
4. 微生物内毒素による興奮性可塑性誘導
5. 樹状突起−細胞体共起性シナプス入力
おわりに


アマクリン細胞サブタイプ特異的な情報処理
名古屋大学 大学院創薬科学研究科 細胞薬効解析学分野
名古屋大学 高等研究院 神経情報処理研究チーム
科学技術振興機構 さきがけ 小坂田 文隆 109
はじめに
1. 網膜細胞サブタイプと並列階層的情報処理
2. 網膜における抑制性神経回路
3. 細胞サブタイプの分類
4. アマクリン細胞の多様性
5. アマクリン細胞サブタイプに特異的な遺伝子導入法
6. 出力を担うRGCの網羅的な電気生理学的解析
7. 薬理遺伝学による神経活動操作
8. サブタイプ特異的なアマクリン細胞の役割
最後に


脊髄損傷後の神経回路再生
北海道大学医学研究院先端的運動器機能解析・制御学講座 角家 健 129
はじめに
1. 損傷軸索が再生しない理由
2. 理想の神経回路再形成
3. 慢性期での損傷部を越えた軸索再生
4. 神経幹細胞/前駆細胞移植によるNeuronal Relay
4-1 神経幹細胞/前駆細胞移植による損傷部空洞の組織再生
4-2 損傷軸索の再生
4-3 損傷軸索の移植細胞への機能的シナプス結合
4-4 移植神経細胞の宿主内への軸索進展
4-5 Relay実現の可能性
4-6 グリア瘢痕の低形成
4-7 随意巧緻運動機能の回復
おわりに


円口類から探る、脊椎動物小脳の発生プランの進化
兵庫医科大学生物学 菅原 文昭 145
はじめに
1. 円口類ヌタウナギとヤツメウナギ
2. 円口類の小脳
3. 小脳の領域化にかかわる分子機構
4. 菱脳唇と、Atoh1による顆粒細胞の分化
5. プルキンエ細胞とPtf1a
6. 本研究のまとめ


海馬記憶エングラムは場所ではなく経験を位置づける地図である
理化学研究所 脳神経科学研究センター
神経回路・行動生理学研究チーム 田中 和正 167
要 旨
1. 序 文
1-1 認知地図仮説
1-2 記憶インデックス仮説
1-3 両仮説の実験的裏づけ
2. 実験デザインと結果
2-1 記憶エングラムは場所細胞か?
2-2 記憶エングラムの形成時に見られる特徴的なバースト活動
2-3 記憶エングラムと神経細胞集団としての振動活動
2-4 文脈記憶想起時に見られる記憶エングラムの活動パターン
3. 考 察
3-1 認知地図としての場所細胞と記憶インデックスとしてのエングラム
3-2 記憶エングラムに見られる受容野再配置の意義


脳タンパク質凝集の立体構造ダイナミクス
金沢大学新学術創成研究機構ナノ生命科学研究所 中山 隆宏 191
はじめに
1. 脳タンパク質凝集の分子メカニズムモデル
2. Aβ凝集の立体構造動態の動画観察
3. Aβ線維伸長
4. 線維の自己鋳型複製メカニズムの厳密度
5. 高分子量画分の凝集体の脱凝集
6. 多分子系in vitro分析と動画観察の対応
7. 結 論
おわりに


シナプス小胞前駆体が軸索輸送される分子機構
東北大学学際科学フロンティア研究所 丹羽 伸介 217
はじめに
1. 軸索輸送
2. キネシンスーパーファミリータンパク質群
3. シナプス小胞前駆体を軸索輸送するKinesin-3(線虫UNC-104、および哺乳類のKIF1A、KIF1Bβ)
4. Kinesin-3がシナプス小胞前駆体に結合する仕組み
5. 線虫を用いた軸索輸送に関与する新規遺伝子の同定
6. シナプス小胞前駆体の軸索輸送に必須のsmall GTPase ARL-8
7. ARL-8によるUNC-104キネシンの自己阻害の制御
8. ARL-8のヌクレオチド状態による軸索輸送の制御
9. ARL-8の活性を制御する因子の探索
10. シナプス小胞前駆体の軸索輸送を制御するBLOC-1関連複合体(BORC)
11. 今後の展望
おわりに


精神疾患の神経回路異常の解明にむけた機能的コネクトミクス法の開発
群馬大学・生体調節研究所・脳病態制御分野
JST・さきがけ 林(高木) 朗子 237
はじめに:なぜ精神疾患研究で機能的コネクトミクスか?
1)病態解明におけるヒト研究の限界
2)モデル動物研究の利点
3)精神疾患の病因としてのシナプトパチー
1. シナプス光操作プローブAS-PaRac1の開発
1-1 スパイン増強の可視化プローブとしての側面
1-2 シナプス光操作プローブとしての側面
2. 機能的コネクトミクス法の創出へ
3. 今後の実験計画
おわりに


樹状突起スパインにおける生化学的情報処理:シナプス可塑性、学習、記憶への意義
マックスプランクフロリダ神経科学研究所 安田 涼平 259
はじめに
1. 長期増強、スパインの構造変化と記憶
2. 2光子蛍光寿命イメージング法
3. カルシウム・カルモジュリン依存性リン酸化酵素兇粒萓化
4. 低分子量GTPアーゼの活性化
5. 脳由来神経栄養因子による情報のやりとり
6. スパインから核への情報伝達
7. まとめと将来の方向性


小脳におけるエピジェネティクス
筑波大学医学医療系ゲノム生物学 山田 朋子 279
はじめに
1. 神経疾患とエピジェネティック制御
2. NuRD complex
2-1 シナプス分化におけるNuRD complexの役割
2-2 神経における2つの遺伝子発現制御機構
2-3 NuRD complexによるH2A.zの制御と一過的な遺伝子発現の不活性化
3. NuRD complexのGatad2bサブユニットの解析
4. 小脳における記憶と学習のメカニズム
おわりに


受容体チロシン脱リン酸化酵素PTPδとそのリガンド群の担うシナプス形成調節
富山大学大学院医学薬学研究部(医学)分子神経科学講座 吉田 知之 303
はじめに
1. シナプスオーガナイザー
2. 新規シナプスオーガナイザーの探索〜IL1RAPL1とPTPδの発見
3. シナプスオーガナイザーとして機能するIL-1受容体ファミリータンパク質
4. PTPδのスプライス多様性
5. シナプス標的調節のプロテインコード〜ミニエクソンペプチド
6. ミニエクソンペプチドによる標的識別の構造基盤
6-1 PTPδ-IL1RAPL1およびPTPδ-IL-1RAcP複合体
6-2 PTPδ-Slitrk2複合体
7. シナプス標的選別に寄与するPTPδとリガンド間の結合特性
8. PTPδによるシナプス前終末誘導の分子機序
9. 神経発達障害モデルとしてのIL1RAPL1ノックアウトマウス
10. 今後の展望


索 引 327