ブレインサイエンス・レビュー 2018
はじめに
(公財)ブレインサイエンス振興財団 理事長 廣川 信隆 3


カルシウムシグナル光遺伝学ツールの開発と応用
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 細胞生物学分野 石井 智浩 31
はじめに
1. 光遺伝学ツールについて
1-1 チャネルロドプシンを中心とした光遺伝学
1-2 新規光遺伝学ツールの創作
1-3 光遺伝学ツール作製の課題
2. カルシウムシグナルについて
3. カルシウムシグナル光遺伝学ツールの開発
4. 他のカルシウムシグナル光遺伝学ツールとの比較
5. 応 用
5-1 細胞局所刺激
5-2 転写因子の制御
5-3 動物個体における制御
おわりに


慢性疼痛が引き起こす前帯状回の興奮性および抑制性シナプス伝達の可塑性
兵庫医科大学生理学神経生理部門 古賀 浩平 51
概 要
イントロダクション
1. 鍵となる仮説:慢性疼痛が引き起こす皮質内でのシナプス長期増強(long-term potentiation:LTP)
2. 皮質における痛みのイメージング研究の最近の進展について
3. 慢性疼痛患者における脳イメージング
4. 脳イメージング研究から動物モデルの使用まで
5. 皮質内でのシナプス伝達
5-1 グルタミン酸(Glutamate:Glu)は興奮性の神経伝達物質である
5-2 GABAは抑制性のシナプス伝達を調節している
5-3 皮質の興奮:興奮性伝達であるlong-term potentiation(LTP:長期増強)
5-4 長期抑制(LTD:long term depression)
6. 生体内での興奮性シナプス伝達であるLTP
7. NMDA受容体GluN2Bサブユニット:もう一つの鍵となる慢性疼痛のエンハンサー
8. IC:細胞・分子レベルで研究されている領域
9. 皮質の脱抑制:抑制性調節の欠落
10. 慢性疼痛における皮質ネットワークモデルの提案
11. 慢性疼痛モデル動物における前帯状回GABAシナプス可塑性の研究結果
12. 結論と将来の方針


古典定義の打破と新CA2領域の出現、そして新たな海馬地図
関西医科大学医学部生理学第一講座・講師 小原 圭吾 73
はじめに
1. 海馬の歴史
2. CA2の古典定義(1934〜2014年まで80年間存在)
3. 古典定義の打破と新CA2領域の出現(2014)
4. 歯状回DGから新CA2領域への新神経回路
5. 機能的神経回路を解析するための革新的技術である光遺伝学
6. 光遺伝学による歯状回から新CA2領域への機能的神経回路
7. 新CA2領域特異的Cre遺伝子組み換えノックインマウス
8. 新CA2領域からdeepCA1への神経回路
9. 嗅内皮質から海馬への新記憶神経回路
10. 新CA2領域から海馬外領域への出力神経回路
11. 新海馬地図のインパクト
11-1 新海馬地図インパクト
11-2 新海馬地図インパクト
11-3 新海馬地図インパクト 
11-4 新海馬地図インパクト
11-5 新海馬地図インパクトァ
11-6 新海馬地図インパクト
11-7 新海馬地図インパクト
12. 新CA2領域の機能
13. 古典定義の打破と新CA2領域出現に至るまでの舞台裏話


マイクログリアによるシナプス貪食と脳機能への影響
東京大学大学院薬学系研究科 小山 隆太 93
はじめに
1. 死細胞および生細胞の貪食
2. 貪食促進シグナル:Find-meシグナルとEat-meシグナル
3. 健常脳におけるシナプス貪食
4. 脳疾患におけるシナプス貪食
4-1 ASDにおけるシナプス貪食の関与
4-2 てんかん発症におけるシナプス貪食
おわりに


中枢神経系におけるシナプス伝達の生理学
同志社大学大学院脳科学研究科 坂場 武史 115
1. Katzの量子仮説
2. Katzの量子仮説の別の見方
3. Calyx of Heldにおける伝達物質放出メカニズムの生理学的解析と伝達物質放出確率(Pr)を規定する要因
4. 伝達物質放出可能な部位数、伝達物質放出可能なシナプス小胞数(N)はなにによって規定されるか
5. シナプス小胞イメージング
6. Calyx of Heldシナプス以外との比較、共通性
6-1 伝達物質放出確率に関して
6-2 ドッキング部位へのシナプス小胞動員に関して
7. まとめ、将来の方向について


スパインの実空間・実時間イメージングへむけて
金沢大学新学術創成研究機構・革新的総合バイオ研究コア・高速バイオAFM応用研究ユニット 柴田 幹大 141
はじめに
1. 高速原子間力顕微鏡とは
1-1 原子間力顕微鏡
1-2 高速原子間力顕微鏡
2. 生きた細胞の高速AFM観察
2-1 細胞観察用高速AFMの開発
2-2 細胞の端で起こる形態変化
2-3 エンドサイトーシスにおける細胞膜の形態変化
3. 生きた神経細胞の高速AFM観察
3-1 高速AFM観察用、低密度海馬神経初代分散培養法の確立
3-2 未成熟な神経細胞の高速AFM観察
まとめと今後の展望


エキソソーム放出障害による神経変性機序
順天堂大学神経学講座 常深 泰司 163
1. パーキンソン病
2. Kufor-Rakeb症候群
3. エキソソーム
4. 中枢神経とエキソソーム
5. エキソソームの生成
エキソソームに含有されているタンパク質
6. ATP13A2とエキソソーム
7. ATP13A2とMVEs/MVBs
8. 亜鉛とILVsの形成
9. ILVsとαシヌクレイン
10. iPS細胞より分化したドパミン細胞
11. エキソソームをターゲットとした新規治療法
おわりに エキソソームをターゲットとした新規治療法


神経細胞における一次繊毛の機能解析
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 神経システム生物学研究室 鳥山 道則 185
はじめに
1. 繊毛の機能と構造
1-1 一次繊毛の構造と機能
1-2 運動性繊毛の構造と機能
2. 遺伝子変異による繊毛病の発症
3. 新規繊毛病原因遺伝子Jbts17
4. Jbts17機能阻害による繊毛病再現モデル
5. ヒト繊毛病患者が脳・神経系で示す異常
6. 神経回路網形成時における一次繊毛の機能
6-1 神経成長因子による一次繊毛の形成促進
6-2 カルシウムシグナルによる一次繊毛の形成促進機構
6-3 プロスタグランジンE2による一次繊毛の形成促進
おわりに


内因性カンナビノイドによるシナプス伝達調節機構の解明
東京大学大学院医学系研究科 神経生理学分野 橋本谷 祐輝 205
はじめに
1. カンナビノイド受容体
2. 内因性カンナビノイド
3. 逆行性シナプス伝達
3-1 Ca2+濃度上昇
3-2 Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化
3-3 相乗効果
3-4 2-AGが逆行性シナプス伝達を担う
3-5 2-AG分解酵素による逆行性シナプス伝達の終結機構
3-6 長期可塑性
4. 内因性カンナビノイドを介した非逆行性シグナル
5. グリア細胞を介したシナプス伝達
6. 内因性カンナビノイドによる慢性作用
7. ミトコンドリアCB1受容体
8. 中枢神経系でのCB2受容体の働き
おわりに


網膜神経節細胞の機能解明
慶應義塾大学医学部眼科学教室光生物学研究室 羽鳥 恵 227
1. 概日時計
2. 網膜とメラノプシン
3. メラノプシン発現網膜神経節細胞と非視覚応答
4. メラノプシンの機能阻害剤
5. メラノプシン発現網膜神経節細胞と脳投射先


モデルからヒトへ:アルツハイマー病の生体分子イメージング
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 樋口 真人 235
はじめに
1. 生体脳におけるAβ病変の可視化とADに特徴的なAβ亜種の同定
2. トランスジェニックマウスを用いたタウ病変イメージング薬剤の開発
3. イメージングを用いたアルツハイマー病患者と動物モデルにおけるグリア細胞表現型の比較
4. 結 語


大脳皮質層構造形成時のニューロン移動におけるリーリンシグナルの機能
慶應義塾大学医学部解剖学教室 廣田 ゆき 259
はじめに
1. 大脳皮質発生過程におけるニューロン産生と移動
2. リーリンシグナルのコア因子
3. プレプレートの分離とsomal translocationにおけるリーリンシグナルの機能
4. 中間帯でのニューロンの放射状移動におけるリーリンシグナルの機能
5. terminal translocationにおけるリーリンの機能
6. リーリン受容体ApoER2の機能解析
6-1 Apoer2ノックアウトマウスでは皮質ニューロンは辺縁帯内へと侵入する
6-2 Apoer2ノックアウトマウスでは早生まれのニューロンの放射状移動が異常となる
6-3 Apoer2ノックアウトマウスにおける遅生まれのニューロン移動の異常
6-4 Apoer2ノックアウトマウスにおいて移動ニューロンはMAP2/CSPG二重陽性構造の下部で停止する
6-5 ApoER2は細胞自律的にニューロン移動を制御する
6-6 ApoER2シグナル下流分子の同定
6-7 ApoER2は生体内に異所的に発現させたリーリンに引き起こされるニューロン凝集塊の形成に必要である
6-8 海馬CA1におけるニューロン移動にApoER2は必要である
7. 今後の展望


ミクログリアによる神経細胞の生存維持機構
大阪大学大学院医学系研究科分子神経科学 藤田 幸 287
はじめに
1. 生後脳でのミクログリアによる神経保護作用
1-1 皮質脊髄路
1-2 生後脳で白質に集積するミクログリアは神経細胞の生存維持に働く
1-3 ミクログリア由来のIGF-1が神経生存に寄与する
2. ミクログリアが皮質脊髄路神経細胞の軸索へ集積する分子機序
2-1 皮質脊髄路軸索に依存したミクログリアの集積
2-2 ミクログリア集積に関わる分子の探索
2-3 生後脳におけるNetrinG1を介した皮質脊髄路の生存メカニズム
3. 考 察


中枢概日時計の神経生理学的基盤の解明
金沢大学医薬保健研究域医学系 統合神経生理学 三枝 理博 307
はじめに
1. SCN神経ネットワークの細胞構築
2. AVPニューロンはSCNの概日リズム発振に重要である
2-1 AVPニューロン特異的な細胞時計の破壊
2-2 Avp-Bmal1-/-マウスではSCNニューロン間のcouplingが弱まり中枢概日時計機能が低下している
2-3 Avp-Bmal1-/-マウスではニューロン間コミュニケーションにかかわる分子の発現レベルがSCN shellで顕著に低下している
2-4 Avp-Bmal1-/-マウスのSCN shellのニューロンが刻む概日リズムは弱く不安定で、周期が長い
2-5 Avp-Bmal1-/-マウスで概日リズム異常が生じるメカニズム
3. AVPニューロンは概日ペースメーカー細胞として機能する
3-1 AVPニューロン特異的な細胞時計周期の操作
3-2 Avp-CK1δ-/-マウスではSCN内の遺伝子発現リズムの時空間パターンが変化している
4. SCN神経ネットワークにおけるAVPニューロンの役割
おわりに


睡眠−覚醒のサイクルにおける海馬の情報処理機構
大阪市立大学大学院医学研究科 水関 健司 327
はじめに
1. 脳状態依存的な発火パターンとネットワークダイナミクス
2. 覚醒時シータ状態とSPW-Rs状態における情報の流れの比較
3. レム睡眠時と覚醒時のシータ脳状態における情報処理の比較
4. いろいろな脳状態における発火頻度の分布
5. SPW-R中の神経発火のパターンと神経発火の同期性について
6. 異なる脳状態や課題・環境における個々の神経細胞の発火頻度の相関について
7. 睡眠による発火頻度の現象
8. 将来の展望


自閉症関連因子FoxG1「量」が制御する回路形成機構
東京女子医科大学 三好 悟一 359
はじめに
1. 自閉症スペクトラム障害に至る要因は?
2. 遺伝子「量」と疾患
3. 自閉症におけるGABA仮説
4. 自閉症モデル動物とエンドフェノタイプ
5. 自閉症のエンドフェノタイプ−FoxG1転写因子の発現上昇
6. FoxG1症候群は自閉症スペクトラムである
7. FoxG1転写因子は大脳発生における重要な制御因子である
8. 興奮性ピラミダル細胞の分化過程でFoxG1「量」は変化する
9. 因子「量」が変化する意味の理解への挑戦
10. 多極性形態の時期、なぜFoxG1因子「量」は再び上昇するのか?
11. GABAニューロン分化発生はFoxG1「量」による制御を受けるのか?
12. 今後の展望


投射ニューロンに着目した大脳皮質神経回路研究
名古屋大学 環境医学研究所 神経系分野2 山下 貴之 383
はじめに
1. バレル皮質における触覚情報処理
2. バレル皮質から送出される触覚情報
2-1 M1p細胞とS2p細胞の層分布と独立性
2-2 M1p細胞とS2p細胞の膜興奮特性
2-3 洞毛運動に伴うM1p細胞とS2p細胞における膜電位変化
2-4 M1p細胞とS2p細胞の感覚入力に対する応答
2-5 触覚の二経路仮説
3. バレル皮質から送出される触覚情報の学習変化
3-1 洞毛刺激−水報酬の連合学習タスク
3-2 連合学習成立前後の触覚シグナル経路の変化
3-3 活動操作による機能モジュールの探索
4. 研究の現状と今後の展望
索 引 405