日中韓 古代都城文化の潮流−奈文研60年 都城の発掘と国際共同研究−
序文
はじめに
松村恵司 奈良文化財研究所所長

奈良文化財研究所は、文化財の宝庫である奈良の地で、専門を異にした研究者が実物に即した文化財の総合調査をおこない、その成果を文化財保護行政に役立てることを目的に、文化庁の前身である文化財保護委員会の附属機関として、一九五二年に設立されました。二〇一二年に創立六〇年の節目を迎えましたが、それを記念して、二〇一二年一〇月二〇日に、日・中・韓の古代都城に関する国際シンポジウム「古代都城文化の潮流」を、なら100年会館で開催しました。本書はそのシンポジウムの記録集です。
奈良文化財研究所は、考古学、建築史、文献史学、庭園史、保存科学、考古科学など多様な分野の研究者が文化財に関する様々な調査研究をおこない、相互の交流、融合を図ることで、数多くの研究成果を挙げてきました。その中でも最も大きな比重を占めるのが、飛鳥と藤原京、平城京などの都城の発掘調査と研究です。古代国家中枢部のこれまで半世紀におよぶ発掘調査を通して、激動の東アジア情勢の中で日本の古代国家の建設がどのように進められたのか、その具体的な形成過程や特質が明らかになりつつあります。