機能性RNAの分子生物学 The molecular biology of non-coding RNA
はじめに

 近年、RNA研究が非常に盛んになってきており、新しくこの分野に入る研究者、あるいはかかわらざるを得なくなった研究者も多いに違いない。本書は、基本的な分子生物学を学んだ学部学生および大学院生を主たる対象として執筆したが、多くの新参RNA研究者にもおおいに役立つことを期待している。
本書は、2002年から活動を行っている「新しいRNA/RNPを見つける会」なる研究会をその出発点として、数名の有志によって企画および制作された。この会では、2006年に『機能性Non-coding RNA』(クバプロ)を出版し、ncRNAの重要性をいち早く紹介した。その後のRNA研究の進展はこの本を手に取った方にはよく知られたことであろう。
 第・章で概説しているように、本書は機能性RNAのことが一通り書かれた教科書である。ただし、RNAのもっとも重要な姿であるmessenger RNA(mRNA)については、本書では基本的に取り扱っていない。mRNAについては、いわゆる分子生物学あるいは生化学の教科書を参照していただきたい。mRNAあるいはセントラルドグマに沿った研究も大きく進展しており、RNAの教科書として偏りがあるとのご批判もあろうかと思うが、焦点を絞り、また、適切な分量に留めるための判断とご了解いただきたい。
 本書は、クバプロの松田國博氏の後押しなくしては到底出版には至らなかった。松田氏と、編集にご尽力いただいた宮下直紀氏また、図版の作成・レイアウトにご尽力いただいた阿部美由紀さんにこの場を借りて感謝の意を表したい。
最後に、編集委員として企画の時点から参加されておられた故三浦謹一郎先生に感謝と哀悼の意を表したい。本書の出版が三浦先生ご存命の内に叶わなかったことは無念の極みであるが、ここに先生のお名前を刻みたい。
 
編集委員代表として
河合剛太
清澤秀孔